いつもより、ちょっと早く目覚めると窓を叩く雨。
カーテン開けてみればちょうど手頃だ。
明日あたり出掛けてみようかと思いはしたが、その後少し呑みすぎた。
仕事を始めたものの雨音ばかりが耳につき、どうにも尻が落ち着かない。
で、渓流の相棒に電話いれれば、
向こうも同じ気持ちで、たちまち明日の話がまとまる。
夕方に空見上げれば、端の方に青空が覗く。
もう少し降ってくれ…と祈りながら支度すませる。
と、相棒からの電話。昼から行ってきた…という。
ほとんどの川が濁流で天竜水系早木戸川での成果。
やられたっ。
マイルドウオッカをダブルであおって、やっと瞼が重くなった。
R257からR151へと奥三河に向けてひた走る。
新野峠に源を発し、大入川をせき止めたみどり湖に注ぐ。
この豊根ダムは天竜川発電所群の一つ、
R151から豊根の集落で右折して大入川を下り、
やがてバスクリン色したみどり湖へ至る。
緑色した湖畔に下って白々と夜が明けた。
すぐにアーチ型の橋が見え、これが古真立川の流れ込み。
途中にもう1本ある沢は永久禁漁。
増水した形跡はあるがすでに平水。水色も澄んでいる。
昨日の雨で魚が散っているはず、望みはこれ。
が、寒気が戻って、渓の冷気が肌を刺した。
ここぞと思うポイントでもアタリがなかった。
会心の合わせで、朱点も鮮やかな22cm。今年初めての1尾だ。
雨が降るまでと満を持してきただけに、久々のアマゴに心が躍る。
2つ目の渕で少し良型を釣った。
掌の中で跳ねるアマゴの感触を楽しみつつ、渓底でニヤリ。
前年秋の放流魚は半天然化してサビを残していた。
先客が二人、上流にいて下ってきたと相棒。
それまで、と竿をたたんで道路に上がり、
どこにいくかと思案しながら一服する。
古真立川は大立で間黒川と合流して大入川に注ぐ。
下流のバックウオーター部は、みどり湖で成育した超大物の可能性がある。
漆島川、井戸川、虫川が天竜川に流れ込む。
これら天竜水系の川は佐久間ダム湖上りの天然魚。
さらに新野峠より早木戸川が天竜川に落ちる。
新野の町をすぎると落差はきつくなり、絶品の渓相を形成する。
支流大河内川の合流点あたりより、天竜川までアマゴがいる。
早木戸川本流は渓深く通らずの連続、中級以上向きである。
上流部は護岸があってアマゴの棲む環境にないが、
中流部より放流量も多く大入川合流点まで釣りになる。
完全に護岸がなされ、道路には車の往来激しく、
野趣には欠けるが簡便であるので人気がある。
途中で大入渓谷を形成する。
大千瀬川上流部には布川渓谷があり、大きな渕が多くカタはよい。
降雨時水量豊富でないと釣りにならない。
勢いよくリアハッチを相棒が閉めた。途端に、アア~。
放り込んだ上着に車のキー、ロックしてしまった。
山の中のことゆえ針金1本あるわけがない。
ガラスを割るよりはと、最後部の窓枠のゴムをナイフで剥がし、
やっとキーが手に入る。
峰橋の水場で昼食の支度。
ブタンガスのコンロで、鍋焼きうどんを作り、
冷たくなった握り飯をフライパンで焼く。
峰橋から2.5kmに交差点、左折は坂宇場。
右折すると富山村を下って天竜へ、佐久間ダムより1時間に位置する。
何段かの滝の連続で上級者でも大変。
天然アマゴの数は多くはなく、一年にわずかの天竜上りが釣れる。
が、交差点の手前で橋の掛け替えで全面通行止め。
やむなく新野峠より長野県に入る。
いつも水量豊かな和合川を狙ったが、またしても最下流の発電所で通行止め。
やむを得ず売木川に向かう。売木川はまだ雪が深く竿を出す状態になかった。
さすがの4WDも滑りながらのあえぎあえぎドライブ。
予想通りに売木の集落は一面の雪景色だった。
畑も山も雪に埋もれて目が痛いほど。
しかし、サビの抜けないアマゴを釣るにしのびず、再び新野峠にい向かった。
左折すると新野の町、直進して新野峠のロータリー。
和合川、売木川は落合ダムで合流し、これより下流は和知野川。
和合川の渓相は素晴らしく大場所の連続。
木曽畑から和合発電所までが釣りになる。
これより上流は浪合川となり、漁区が異なって三州街道沿いは解禁が遅い。
平水時は水勢も弱く釣りにならない。
取水ダムより上は一変して豊かな流れだ。
上流部は岩倉川、前川、軒山川に分かれる。
前川は売木集落より中央を流れて新野峠へ上っていく。
軒山川は売木川の本流で、茶臼山カントリークラブ下まで続く。
この3つの川はイワナ域である。
峠を下って坂宇場川を覗いてみた。すでに夕闇迫り、川は薄暗い。
私は宇連で川に入った。が、道路のある崖の補修工事で川底は荒れていた。
ま、いいか。家族分の3匹がクーラーボックスの中にある、と竿納め。
最もよく渓流釣りにいっていた頃だ。
山好きと釣り好きの両方を満たしてくれた。
文章の端々に鈴野藤夫氏の影響がみられる。
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