●早朝から大賑わい

夏の釣りは暑さをどうしのぐかだ。今夏は雨が少なく、熱帯夜が続く。

エアコンはフル回転、夜中でもタイマーが切れれば目が覚める。
暑い、暑いといいながらも1週間の会社勤め。
休日も涼しい部屋の中で、甲子園の熱戦でも観ていればいいものを、

じっとしていられないのだから因果な性分。

さて、御前崎港。クロダイ釣りも盛期入り。
例の沖堤はいまが一番魚種の多い季節で、まるで水族館。

暑さにも負けず、毎週、毎週、顔の皮がべろりと剥けても通い込む。

クロダイ、メジナ、ニザダイ、カマス、シマアジ、アジ、
イワシ、サバ、ワカナゴ、ソウダガツオ.

それから、ボラ、イシダイ、イシガキダイ、アオリイカ、スズキ、
シイラ。ざっと上げても16種が並んだ。

真夏の太陽をいとわねば、
クーラーボックスいっぱいの釣果は確実。が、とにかく暑い。

コンクリートの照り返し、連日の30℃超の気温のなかで、
釣りをするとなれば、早朝から午前中に終わるのが適当なのだ。

深夜2時に出発した。
私は典型的な深夜型人間で、ずっと起きているのは強い。
が、一度眠ったらもう駄目。
したがって朝も弱い。
カミさんが寝床まで何度も足を運び、
やっと起床というのが毎日のこと。


この日もナイターの阪神戦観ながら眠ってしまい、
起こされてご機嫌はすこぶる悪い。

それでも安全運転で御前崎港旧堤駐車場へ3時に到着。
仕度をしていると、夜釣り上がりの釣り人がゾロゾロ

朝も早よから賑やかだわい…と自分のことをタナに上げて誰かがいい、
仲間一同が大笑い。

●夜明け、良型メジナの列

この朝は造船所に預けてある仲間のボートで沖堤目指す。
定員6名ずつ、往復3回。

第一陣が渡ったところで4時、遊漁船の出船時間となって小休止。

次々と出る遊漁船を待って、最終の私達が渡った時には夜が明けかけていた。

竿を出したのは 一文字ケーソンの沖先端。先着の仲間がコマセを入れていて、
どれ…と明け初めた海中を覗く。

いた、いた。すでに手のひらメジナが真っ黒け。その下には悠々と泳ぐキロ級メジナ。

仕度もそこそこに仕掛けを入れたら、エサが見えているうちに30cmが飛びついてきた。

潮はカンカン澄み、ハリスは1号。

コマセを続ける。キロ級が増えてきて、気持ちはワクワク。
ここで招かざる客のお出まし。ボラだ。

50cm を超すヤツの大群がウロウロ。一瞬にしてメジナは姿を消した。
時折、ウキを消し込むのは良型カマス。

が、こいつが釣れるとハリスが傷む。

と、ス~とウキが沈み、軽く合わせたらそのまま10mほど走って、
簡単にハリスが切れた。ボラが食ったのだ。

ボラの群れはどんどん増えた。もう釣りにならない。

小用足しに反対側にいき、放水の落下する先見れば、こっちにもメジナが真っ黒。

そっと引っ越しして仕掛けを入れたら、いきなり35cmのクロダイ。
それみて、ぞろぞろみんなが引っ越し。

またまた、コマセをドカドカ入れるものだから、
ボラの群れが先端まわって引っ越してきた。

●シマアジ乱舞

沖ケーソンとの間、川のように流れる水路にイワシの大群が現れた。

ジェット天秤に下田バケ付けて、群れの真ん中に飛ばす。
ゆっくり引いてくるとイワシとは思えないアタリ。

18cmの七ツ星、マイワシだった。今夜のオカズにと30分ばかり釣りまくる。

と、その群れの中にヒラスズキが突っ込む。シイラが悠々と泳ぐ。
スピード付けて走るのはヒラマサか。

仲間の一人がシイラの鼻先にエサを落とした。
一発で飛びついて反転、沖をめがけてまっしぐら。

やりとり数分、60cmほどの雄だった。何度みても神秘的な体色の変化、
しばらく見惚れてタバコを吸う。

誰かが声を上げた。今度はアオリイカ。
50cmくらいの美味しそうなヤツが悠然と、堤防下を泳いでいく。

またまた誰かが声を上げた。これは凄かった。

50cm級のクロダイが20匹ほど、呆然と見ている一同の前を威風堂々の行進。
が、まだまだこれでは終わらなかった。

突堤から10mの所でキラリ、キラリ。動きからみてシマアジだ。40cmくらいか。

これなら勝負できると群れのなかに仕掛けを飛ばす。
ややあって鋭いアタリ。が、合わせた途端に突っ走る。

2号に換えてあったハリスがひとたまりもない。
何回か切られているうち、1匹を耐えきった。

小さいながらもシマアジ。美しい魚体に、思わず…うまそうだなァ。

■付記

昭和55年の釣行記。御前崎沖堤の魚種の多さ、濃さが描かれているので収録。
全面禁止になる直前頃だと記憶している。

渡れればいつもこんな状態だった。私はほとんど毎週のように通い込んでいた。